「だから私は能を演じ続ける」。島内愛好家に聞く

現在島内には20代から80代までおよそ200人の能楽愛好家がいるといわれる。生活に息づいている佐渡の能楽について、佐渡能楽連盟会長の池野平太郎さんに伺った。

「稽古した人が舞台に立てる機会は、佐渡は圧倒的に多いですね」と池野平太郎さん

池野さんが修復に尽力した潟端(両津)諏訪神社の能舞台

潟端能舞台は孫の航平君と真友ちゃんの稽古場でもある

2007年に演じた「船弁慶」で、航平くんと初共演

池野平太郎さん(73歳)が能楽の世界に入ったのは昭和29年。「もともと父親がやっていましてね。風呂でラジオから流れる能の謡いを一緒に聴いていたら、あの声がたまらなくなりました。何というかなあ。はまってしまうんですよ」。池野さんが暮らす潟端(かたばた)集落では、当時は酒宴の席には必ず能の謡(うた)いをやっていたそうだ。

現在佐渡には池野さんが所属する両津のほか、新穂、金井、佐和田、相川、真野、羽茂、畑野の各地区の能楽会、そして本間家のお弟子さんたちが加盟する佐渡能楽クラブがある。池野さんはそれらの会をまとめる佐渡能楽連盟の会長を務めている。本間家に師事し、能楽クラブの会員でもある。

6月の薪能月間、島内愛好家は忙しい。「現在連盟には160人ほどが加盟しています。佐渡ほど愛好家が実際の舞台に立つ機会が多いところはありませんね。ただ、ここ30年くらいは職業の変化などで能人口かなり減っています。現在の悩みは囃子方(笛方、小鼓方、大鼓方、太鼓方の4つに別れる演奏集団)が少ないことですね」。

能の場合、全員で合わせて練習するのは本番当日というのがほとんど。それぞれが謡本をもとに自分の役を練習し、本番にのぞむ。現在池野さんは6月28日に出演する正法寺・ろうそく能の稽古に余念がない。『通小町』のワキ方だ。「本堂で演じるのは、目と鼻の先に観客がいてやりにくい部分もありますが、世阿弥ゆかりの寺でやることと、島内でなじみのない演目をやることに意味があると思っています」。

十数年前、池野さんは地元有志で潟端の能舞台修復に取り組み、結果1995年に県有形民俗文化財に指定。その後行政の補助で床板を張替え、本格的な修復が実現した。今そこで稽古をしているのが、孫の航平くんと真友ちゃんだ。「孫が能を始めたことは、うれしいですね。幼い頃に身体で覚えたものは、たとえ中断しても、何らかの形で残ります。私が謡いを聴くと血が騒ぐようにね」。

最後に池野さんに能の魅力をたずねてみた。「亡霊であるシテ(主役)と現代の人間であるワキが同じ舞台に立つという幻想的なものは、ほかの芸能にはありません。そぎ落とされた動きの中に感情が表現され、観る人が創造をふくらませられるのも、能ならではですね」。

6月28日正法寺で演じる「通小町」の謡本

能の世界がもっと身近に! 見どころ別チェック「だから、私は能を演じ続ける」。佐渡の愛好家に聞く6月演能スケジュール

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