鬼が招く佐渡の春

鬼の数だけ踊りがある

鬼太鼓の始まりははっきりと分かっていませんが、18世紀後半に記された「佐渡年中行事絵巻」では、相川の祭りとして鬼太鼓の様子が紹介されています。 様々な経緯を経て島内に伝播した鬼太鼓。踊りの型は大きく「豆まき流」、「一足(いっそく)流」、「前浜流」、「花笠流」、「潟上流」の5つに分けられます。 ただし同じ型でも鬼の踊りや太鼓のたたき方が微妙に異なり、一つとして同じものがありません。
踊りにはそれぞれに意味合いがあり、鬼は手の返し方、足の出し方ひとつひとつ注意を払っています。そして太鼓の打ち手と鬼の舞い手が呼吸を合わせることが何より重要です。鬼太鼓が生み出す静と動、絶妙な間のとり方は、集落で小さい頃から鬼太鼓に親しみ、先輩からの教えを請い、ともに練習を重ねてきた賜物なのです。
鬼の顔にも個性があふれています。佐渡の鬼面は基本的に角がありません。面や髪の色にも集落が受け継いできた歴史が息づいています。身に付ける衣装も伝統的な図柄のものや鮮やかな色使いのものなどバラエティに富んでいます。鬼太鼓のアイテムにも着目して見学するのも面白いでしょう。

太鼓が告げる春の訪れ

4月の佐渡は島内各地で春祭りが行われます。特に島開きの「4月15日」は約40ヶ所の集落で祭礼が行われ、地元の鬼太鼓が「門付け(かどづけ)※」を行います。
朝早く場所によっては夜中に神社で打ち出しを行った後、集落の1軒1軒を回って舞い踊ります。門付けされた家では、振る舞いの料理やお酒で一団をもてなします。
祭りに合わせて帰省する人も多く、集落が賑やかになる1日です。
せっかくの機会です。旅先で神社幟を見かけたら立ち寄ってみてはいかがでしょうか。鬼太鼓の後についてのんびりと歩いてみるのもなかなか楽しいものです。祭りを心待ちにしていた集落の温かい空気を実感できますよ。
ただし集落の鬼太鼓は神社に奉納する神事ということを忘れずに。門付け中の鬼太鼓を横切ったり、無断で私有地に立ち入ったりすることのないよう、マナーを守っての見学をお願いします。
また桜と伝統芸能が楽しめる「春の佐渡芸能祭」、島内各地から鬼太鼓が集結し踊りを披露する「鬼太鼓どっとこむ」など、鬼太鼓を堪能できるイベントも数多く予定されているので、そちらにあわせて来島するのもおすすめです。

※「門付け(かどづけ)」・・地区の家一軒一軒を回り、玄関先で鬼太鼓を披露すること。縁起物とされ、門付けを受けた家の人はご祝儀を振る舞う